「申告しなくていい」は自己判断せず、資料・期限・確認先を整理する

結論から言うと
不動産を売って税務上の利益が出る場合は、原則として確定申告が必要です。3,000万円控除など、申告が必要な特例を使う場合もあります。「買値より安く売ったから申告不要」と決めず、資料をそろえて確認しましょう。
契約から引渡しまでに年をまたぐ場合は、どの年の所得として申告するかも確認してください。原則は引渡しの年ですが、契約の効力が発生した年として申告することもできます。複数物件の売却や健康保険などへの影響も考え、事前に相談しましょう。
申告不要になる場合もある。ただし、買値との比較だけで決めない
税務上の譲渡損失があり、利用する特例もない場合など、売却について確定申告が不要になるケースはあります。
ただ、建物の取得費は購入額から減価償却費相当額を差し引くため、「買った額より安く売れた」と「税務上の利益がない」は同じとは限りません。ローンを返して現金が残らなくても、それだけで税金がかからないとは判断できません。
また、特例で税額がゼロになる場合と、申告が不要な場合も別です。例えばマイホームの3,000万円特別控除は、要件を満たしたうえで確定申告して適用を受けます。
HONNE|現場のホンネ
私は、益でも損でも、まずは申告するつもりで税務署へ資料を持っていくことを勧めています。税務署が、こちらの購入額や経費まで把握しているとは限らないからです。「損したから税金はない」と放っておかず、買った金額と売った金額、かかった費用を示して確認する。不要と確認できれば別ですが、自分だけで不要と決めるより、そのひと手間をかけた方が安心だと思います。
年の早いうちに売却が終わった方から、税務署から申告に関する案内が届いたと聞くこともあります。ただ、案内を待って準備を始める必要はありません。届いた内容で判断に迷えば、電話などで自分の取引について確認することを勧めます。
購入時と売却時の書類を、ひとまとめにする
確認へ持っていく資料は、次のように整理すると話が進めやすくなります。
| 資料 | 探すものの例 |
|---|---|
| 購入時 | 売買契約書・請負契約書、精算書、購入費用や増改築の領収証 |
| 売却時 | 今回の売買契約書・精算書、仲介手数料・測量・解体などの領収証 |
| 個別事情 | 相続時の資料、居住や転居の時期、住宅ローン関係書類など |
すべてがそのまま経費や提出書類になるわけではありません。何のために支払ったかを説明できるように残しておくことが大切です。
昔の契約書が見つからなければ、権利証の保管場所やローン関係書類、相続した家なら以前の所有者の書類も探してください。見つからない場合も、残っている資料を基に税務署や税理士へ相談しましょう。
取得費が分からない場合などには、売却額の5%を取得費とする扱いがあります。これは「申告しなかった罰として5%しか控除されない」という制度ではありません。申告書を出すことと、取得費の根拠を残すことは分けて考えます。
年をまたぐ契約は、どの年の所得にするかを先に確認する
契約の効力が発生した年と引渡しの年が違う場合は、両方の日付を伝えて相談しましょう。「好きな申告時期まで待てる」という意味ではなく、どの年分の所得として扱うかの話です。
同じ年に複数の土地・建物を売る場合、譲渡損失をほかの土地・建物の譲渡所得から差し引けることがあります。一方、給与など別の所得との損益通算は原則できず、マイホームの一定の特例などを別に確認します。
複数物件の売却、特例の期限、保険料や医療費の負担への影響が気になる場合は、申告直前ではなく早めに税務署・税理士や加入先へ相談してください。
税務署へ確認することは、必要性・対象年・資料・期限
この売却は申告が必要ですか。何年分として扱い、どの資料をそろえ、いつまでに手続きすればよいですか?
申告は原則として譲渡した年の翌年に行います。具体的な受付期間や期限は、その年分の国税庁案内で確認しましょう。
税務署へ相談するか、計算・申告を任せたい場合や事情が複雑な場合は税理士へ相談します。仲介会社には契約書・精算書など取引資料の確認を頼めますが、特例の適用可否や税額は税務の確認先へつなげてください。
なお、確定申告するなら、ほかの所得も含めて確認が必要です。「念のため出せば、必ず税額面でも損をしない」とは限りません。申告不要の扱いを受けられる少額所得でも、申告する場合には含める必要があるケースがあります。
まず資料をそろえ、自分の取引について確認する。 申告不要と確認できた場合は、その判断の根拠が分かるよう、相談時の資料やメモを残しておきましょう。申告後も、契約書や領収証をすぐに処分せず、必要な保管期間を確認してください。
出典・参考資料
- 国税庁|No.3102 譲渡所得の申告期限
- 国税庁|No.3252 取得費となるもの
- 国税庁|No.3258 取得費が分からないとき
- 国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国税庁|No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
- 国税庁|No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(質疑応答)
既存資料の一次情報確認日:2026年9月16日。申告年・損失の扱い・概算取得費・申告不要制度の補完確認日:2026年10月16日。


